タイトル:介護をしていて気がついた事
【コミュニケーション】
*発話が困難になったり、声量が小さくなったりで、相手の発話が聞こえない時、「はいはい、~なのね」と決めつけられると、被介護者はもどかしく感じるようだ。明確にわからない時は、「よく聞こえなかったんだけど、~っていうこと?」と聞き返す形にすることも大事。全くわからない時は「ごめんね、わからないんだけど…」と言ってから、相手の視線の先にあるもの(テーブルの上のもの、着ているもの、部屋にあるものなど)に話題を移すことで、意志の疎通を回復するというのも一つのテクニック。
*忙しい時にベルなどで呼ばれると、「何?早く言ってよ!」と叫びたくなることもある。一旦相手の表情や体の位置などを見に行って、緊急性のある異変がないことを確認してから、「今、~をやっているから、あと~分ぐらいしたらもう一度来るから、待っててね。」と言いきることも必要。相手に時間感覚がどれぐらい機能しているかどうかは別として、「また来るから」と笑顔で言ってもらうだけで満足することもある。
【トイレへの介助】
*失敗はつきものだが、オムツという言葉には抵抗感がある場合も多い。「お座布団」と呼んでいるご家庭があったのを見習って、私もオムツの語は避けるようにしている。成人用オムツは「紙の下着」、尿取りパッドは「紙のシート」と言うだけで多少は抵抗が少なくなる。
*出物腫物、所嫌わず…で、唐突にトイレへの介助を頼まれることがある。自宅・外出先共に、介護者までオロオロするとストレスが大きいので、服を濡らすことを諦めることも必要かもしれない。外出時は「あと~分ぐらいトイレに連れていってあげることができないから、紙の下着にしてもらえないかな。~分の後、すぐ替えてあげられるから」と、割り切ることも大切。紙の下着でも漏れることはよくあるので、常に替えのパンツや濡れティッシュ、ビニール袋を中に広げた洗濯物かごを寝室や車の中に一式用意しておくと、失敗へのストレスが減る。
【薬】
*アメリカでは錠剤は個包装していないが、日本の薬局でもらう薬は一つ一つ包まれていて誤飲が多いそうだ。予め個包装から出して1回の服用ごとにピルケースに入れておくといい。
*病状が複数の場合、1日3回服用のものと6時間置き服用のものを併用するなど、複雑になってそのたびに何か食べなければいけないこともある。介護者(被介護者ではなく!)が是非食べたいと思うようなお菓子(小分け包装のクッキー、煎餅など)を用意しておいて、投薬の時に一緒に食べるようにすると、投薬時間が介護者のストレス解消時間に変わる。
【食事】
*筋力が落ちると、ナイフで切ったり、箸でつまんだりができなくなることもある。食卓に持っていってからナイフで切るよりも、調理時から被介護者の分だけ小さくしておくと、味も沁みるし、被介護者もゆっくり食べられる。箸やフォークの代わりにスプーンですくわせる場合、小鉢やスプーンはできるだけ高級感のあるものを使うと雰囲気がよくなる。
*食べこぼしも多くなるが、エプロン上のものより、専用のネックレスを使って首からナプキンを掛ける方がエレガント。この際、ナプキンは派手めな色柄を選んで食卓や服にコーディネイトすると楽しい。また、介護者や家族も同じものをつけるようにしてもいい。
【入浴】
*シャワーヘッドを掛ける金具を一つ増やして、介護者にとって一番手に取りやすい高さ・位置に加えておくだけで、入浴の介助はずっと楽になる。
*香りは気持ちに大きく作用するので、石鹸やシャンプーは介護者が一番心地よくなるものを惜しみなく揃えたい。
*被介護者が自分の体をうまく洗えない場合でも、手袋型の垢こすりを付けて石鹸をなすりつけておくと、多少は自分でもできる範囲が広がる。
【寝具】
*自由に寝返りが打てない被介護者にとって、枕は最重要アイテムの一つ。いろいろ試して、一番体にフィットするものを選べるといい。腰痛がある人の場合、両脚の間に専用クッションを挟んで横向きに寝ると腰への負担が減らせるようだ。
*本人の自覚がなくても、睡眠時無呼吸症の徴候が出ていることがある。眠りが浅かったり寝息が以上に大きい被介護者の場合、一度は専門機関に相談するのもよいかも。加齢と共に口呼吸になっている場合も、CPAPの使用で鼻からの呼吸を促進できる。
*寝具を漏れから守る防水シートはいろいろ出ているが、厚手のものがお薦め。米国内ならネットで大判で良質のものが1枚18ドルで買える。 日本では同様のシートが7000円もするので、需要があればお土産にもいいかも。
【洋服】
*多少伸びる素材で着脱の容易なものが一番。高齢者だからと言って地味にし過ぎず、スポーツウェアのアウトレットでファッション性の高いものを買うのがお薦め。体操やトレーニングも、気持ちから入ることで楽しくなる。薄くて保温性のある材質だと、洗濯・収納・着替えの持ち運びがうんと楽になる。
*おしゃれが難しくなる年代だけに、帽子、眼鏡チェーンなどには思い切りこだわってあげたい。一緒に買いにいって試着するのも、小物なら簡単。
【娯楽】
*今はユーチューブなどで、昔の流行歌やテレビ映像を見ることが簡単になった。好きだった歌などを一緒に検索してあげると、非常に喜ばれる。感想を交換したり、その曲が好きになったきっかけなど、思い出話の糸口にもなる。
*大きな活字の本も増えているが、アメリカで日本語の出版物を見つけるのはなかなか大変。興味がある分野の記事を検索してあげて、ワードに落として字を拡大し、行間も広げて印刷してあげると、視力が低下した高齢者でも久しぶりに読書を楽しむことができる。
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認知症とパーキンソン病の親の介護をしている方からの投稿です。
介護者の方々のお役に立てる内容と思い、この方の許可を得てサイトに載せています。